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行列式の定義を理解するための置換の知識

行列式の定義

行列Aを
$ \begin{eqnarray} A = \begin{bmatrix} a_{ 11 } & a_{ 12 } & \ldots & a_{ 1n } \\ a_{ 21 } & a_{ 22 } & \ldots & a_{ 2n } \\ \vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\ a_{ n1 } & a_{ n2 } & \ldots & a_{ nn } \end{bmatrix} \end{eqnarray} $
とした時、行列式|A|は
$ |A| = \sum sgn \left( \begin{array}{ccc} 1 & 2 & 3 & \ldots & n \\ i_1 & i_2 & i_3 & \ldots & i_n \end{array} \right) a_{1i_1} a_{2i_2} a_{3i_3} \ldots a_{ni_n} $
と定義される。
$ \left( \begin{array}{ccc} 1 & 2 & 3 & \ldots & n \\ i_1 & i_2 & i_3 & \ldots & i_n \end{array} \right) $
定義の↑の部分が「置換」である。

$ a_{1i_1} a_{2i_2} a_{3i_3} \ldots a_{ni_n} $の部分は各行から同じ列を取らないように置換の下の行の順番で行列の成分を掛け合わせると覚えればいい。

置換の定義

置換とは1からnまでの自然数を同じ1からnまでの自然数のいずれかに1対1対応させる変換である。
$ \left( \begin{array}{ccc} 1 & 2 & 3 & \ldots & n \\ i_1 & i_2 & i_3 & \ldots & i_n \end{array} \right) $
のように表し、この場合1を$i_1$に2を$i_2$にnを$i_n$に対応させる。

置換の性質

置換を$\quad \sigma : \Omega \longrightarrow \Omega \quad$ただし$\quad \Omega = \{1,2, \ldots ,n\} \quad $とする。

1.置換は写像

置換$ \ \sigma \ $は$ \ \forall i \in \Omega \ $に対して、ある$\ j \in \Omega\ $をただ一つ対応づける。

2.置換は全射(上への写像)

どの$\ j \in \Omega\ $にも、ある$ \ i \in \Omega \ $から数字が移ってくる。
$j = \sigma(i)$

3.置換は単射(1対1写像)

$ i,j \in \Omega \quad i \neq j \ $ならば$i$と$j$は同じ数字に移らない。
$ i \neq j \implies \sigma(i) \neq \sigma(j) $

4. 1〜3より置換は全単射

置換の定義(全単射という言葉を使って)

$ \Omega = \{ 1, 2, 3, \ldots , n \} $に対し
全単射$ \quad \sigma : \Omega \longrightarrow \Omega \quad $を$ \ \Omega \ $上の置換と呼ぶ。

補足

$ \Omega = \{ 1,2, \ldots ,n \} \ $上の置換は$ \ n! \ $個ある。
$ \Omega $上の置換全体の集合($ \Omega $の対称群)を$ S_{\Omega} $もしくは$ \Omega $の元の個数$n$をとって$S_n$で表す。
$ 1_{\Omega} = \left( \begin{array}{ccc} 1 & 2 & 3 & \ldots & n \\ 1 & 2 & 3 & \ldots & n \end{array} \right) $
を恒等置換と呼ぶ。

置換の積

$ \sigma , \varphi \in S_n $とする。この時$ \sigma $と$ \varphi $の積
$ \sigma \circ \varphi \in S_n $を
$ (\sigma \circ \varphi)(i) = \sigma(\varphi(i)) \qquad i=1, \ldots ,n \quad$
で定める。
$ \left( \begin{array}{ccc} 1 & 2 & 3 \\ 3 & 2 & 1 \end{array} \right) \circ \left( \begin{array}{ccc} 1 & 2 & 3 \\ 2 & 1 & 3 \end{array} \right) = \left( \begin{array}{ccc} 1 & 2 & 3 \\ 2 & 3 & 1 \end{array} \right) $
※右側の置換から計算する。

結合律は満たすが、交換法則は成り立たない

置換の積は結合律$ (\sigma_1 \circ \sigma_2) \circ \sigma_3 = \sigma_1 \circ (\sigma_2 \circ \sigma_3)$を満たすが、
交換法則$ \sigma_1 \circ \sigma_2 = \sigma_2 \circ \sigma_1 $は必ずしも等しくない。

結合律を満たすので$ (\sigma_1 \circ \sigma_2) \circ \sigma_3 $や$ \sigma_1 \circ (\sigma_2 \circ \sigma_3) $はカッコを省略して$ \sigma_1 \circ \sigma_2 \circ \sigma_3 $と表せる。

互換

置換のうち2つの数字だけを入れ替える次のような置換を「互換(ごかん)」という。
$ \left( \begin{array}{lllllll} 1 & 2 & 3 & 4 & 5 & 6 & 7 \\ 1 & 6_* & 3 & 4 & 5 & 2_* & 7 \\ \end{array} \right) $
互換は巡回表示で入れ替える数字だけを書いて
$(2,6)$
のように表せる。

置換に互換を左から掛ける

$ \begin{align} (1,4) \left( \begin{array}{lllll} 1 & 2 & 3 & 4 & 5 \\ 3 & 5 & 4_* & 1_* & 2 \end{array} \right) &= \left( \begin{array}{lllll} 1 & 2 & 3 & 4 & 5 \\ 4 & 2 & 3 & 1 & 5 \end{array} \right) \left( \begin{array}{lllll} 1 & 2 & 3 & 4 & 5 \\ 3 & 5 & 4_* & 1_* & 2 \end{array} \right) \\ &= \left( \begin{array}{lllll} 1 & 2 & 3 & 4 & 5 \\ 3 & 5 & 1_* & 4_* & 2 \end{array} \right) \end{align} $
置換に互換を左から掛けると置換の下の行の互換の要素が入れ替わる。

任意の置換は互換の積で表される(一意ではない)

$ \left( \begin{matrix} 1 & 2 & 3 & 4 & 5 & 6 & 7 \\ 6 & 2 & 5 & 1 & 3 & 4 & 7 \end{matrix} \right) = (4,1)(3,5)(1,6) $
そして置換を互換の積で表した時、互換の個数が奇数になるものを奇置換、偶数になるものを偶置換という。
置換$ \sigma $が奇置換の時
$ sgn \ \sigma = -1 $
置換$ \sigma $が偶置換の時
$ sgn \ \sigma = +1 $
となる。

※恒等置換は偶置換。

置換が奇置換の時、その置換をどのような互換の積で表しても互換の個数は奇数になる。
偶置換の時も同様。

行列式の定義(再掲)

$ |A| = \sum sgn \left( \begin{array}{ccc} 1 & 2 & 3 & \ldots & n \\ i_1 & i_2 & i_3 & \ldots & i_n \end{array} \right) a_{1i_1} a_{2i_2} a_{3i_3} \ldots a_{ni_n} $
ここまでで上の行列式の定義の
$ sgn \left( \begin{array}{ccc} 1 & 2 & 3 & \ldots & n \\ i_1 & i_2 & i_3 & \ldots & i_n \end{array} \right) $
の意味が分かった。$ \sum $は全ての置換の種類($ n! $個ある)について和を取ることを表している。

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